「壇ノ浦で舞った男」感想 虚しい戦と梶原景時の暗躍
今回の主なキャスト
北条小四郎義時 小栗旬さん
八重 新垣結衣さん
政子 小池栄子さん
大姫 落井実結子さん
りく 宮沢りえさん
実衣 宮澤エマさん
三浦義澄 佐藤B作さん
三浦平六義村 山本耕史さん
安達盛長 野添義弘さん
里 三浦透子さん
平清宗 島田裕仁さん
平知盛 岩男海史さん
安徳天皇 相澤智咲さん
二位尼 大谷恭子さん
公式サイト: NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
公式Twitter: 2022年 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」 (@nhk_kamakura13) | Twitter
公式Instagram: https://www.instagram.com/nhk_kamakuradono13/
源義高の死を知り、心を閉ざしてしまった大姫の場面から物語は始まる。
政子らに頼まれた八重が世話をするが、姫の表情は変わらない。
自分の鼻の下に筆で髭を書き、おどけてみせる八重。
姫はやはり表情を変えず、声も出さない。
髭をつけたまま、八重は政子と実衣に報告をする。
「やはり 心の戸を閉じてしまっておられます。いろいろやってみてはいるんですけど」
「無理やり 戸を開けようとすると 余計 閉じこもってしまう気がします。気長に まいりましょう」
深刻な話をしているのに、チョビ髭で視聴者を愉快にさせる八重であった。
神に選ばれし男 源義経
一の谷の合戦に敗れ、四国の屋島に逃げた平家軍。
これに対し鎌倉軍は、範頼軍が九州、義経軍が四国に渡り、平家軍の逃げ道をふさぐ作戦だ。
九州の平家方と争っている豊後の水軍の舟を借り、源範頼、北条義時らは九州に渡ることに成功。
豊後から筑前へと攻め入り、平家方を討った。
平家は逃げ道を断たれた形である。
ここで有名な、源義経と梶原景時の「逆櫓(さかろ)論争」が勃発する。
「舟というのは 馬と違って 急に向きを変えることはできぬ。そこで 例えば 舟の舳先(へさき)にも櫓をつけるというのは」
「ばかじゃないか! 逃げるための道具など なぜ考える」
「前に進むことしかできぬ者は 猪武者と申す!」
「行ったり来たりのニワトリ武者より よほどましだ!」
このドラマならではの言い回しだが、「平家物語」に出てくるものと大筋では一致している。
そしてドラマでは、その後、義経と景時が2人で話すシーンがあった。
「私は思ったことを口にする。忘れてくれ」
「よくよく考えれば 九郎殿の申される通り。櫓をつけている場合ではござらぬ。目が覚めました」
「今 舟を出せば 3日かかるところを 風に乗って半日で阿波に着く。多少 危険かもしれないが 危険でない戦なんてあるか」
「異論はござらぬ」
「私のことを1番わかってくれているのは お前だ。平三」
みんなに迷惑はかけない、手勢だけで行くと続け、義経は屋島で待っているとの言葉を残し、去って行った。
話を聞いていた畠山が現れ、義経を止めなかった梶原景時に問う。
あれだけの武人を、ここで失ってもよいのかと。
「命を落とせば そこまでのお人だったということ。九郎義経が 神に選ばれた男なら 必ず成し遂げる」
その言葉通り、義経は生きて四国へ渡り、福原の平家軍に奇襲をかけた。
義経を恐れる頼朝の下知と梶原景時の思惑
義経の快進撃は鎌倉にも伝えられた。
だが弟のあまりの強さに、源頼朝は心配事を口にする。
「あれは すぐに調子に乗る男だ。このまま勝ち進むと……」
「例えば……次の鎌倉殿は自分だと」
これから先、総大将は梶原景時に任せる、義経を戦に出すなと下知する。
その下知を受け、義経と梶原は軍議で芝居を打っていた。
義経が戦に出るか出ないかで言い争い、最後は抜刀寸前に。
皆が2人を止め、義経は総大将のまま出陣するという話で落ち着く。
「あれでよかったのか?」
梶原と2人になり、確認する義経。
「九郎殿を大将にという流れを作るには あれしかございませんでした」
「それにしても兄上がわからん。なぜ あのような下知を」
「気になさいますな。勝てばよいのです」
摂津での梶原の様子も気になったが、この台詞で確信となった。
梶原は、表向きは義経に逆らわず、都合のいいように御そうとしていると。
そうでなければ、頼朝を気にするななどという台詞を言う男ではないのだ。
2人は「どう戦うか」という話題に移る。
義経は語った。
「帝と神器は 戦に勝てば戻ってくる。そうだ…舟の漕ぎ手を狙うのは どう思う? 漕ぎ手がいなくなれば舟は立ち往生。そこを 一気に」
梶原が返事をするシーンはなく、場面は壇ノ浦の戦いへと移る。
壇ノ浦の戦い 狂気の策と虚しい終焉
元暦2年(1185年)3月24日朝、いよいよ壇ノ浦の戦いの火蓋は切って落とされた。
義時らが遠くから見守る中、義経軍は潮に乗って敵に接近。
矢の攻撃に耐えつつ、平家軍を引きつける。
そして反撃の時が来た。
「敵は十分 引きつけた! ためらうことはない! 漕ぎ手を射殺せー!」
「漕ぎ手は兵ではござらん! 殺してはなりませぬ」
「構わぬ」
「末代までの笑い者になりまする」
「笑わせておけ」
義経は矢を放てと命令するが、従う者はいない。
そこで自ら矢を手にし、平家軍に向けて放ってみせる。
皆が見守る中、矢は敵の舟の漕ぎ手に命中した。
矢を放たねば命はないと、味方に向けて矢を構える義経。
もはや狂気としか言いようがない。
観念した味方が、次々と矢を放ち、敵の舟の漕ぎ手を射殺す。
これにより形勢は逆転した。
敵の舟に乗り移り、義経軍はどんどん攻め込んでいく。
義経は舟から舟へと飛び移り、縦横無尽に平家軍を翻弄した。
平家軍の総大将 平宗盛は、もはやこれまでと、味方の敗戦を受け止める。
振り返った視線の先には、幼き帝 安徳天皇の姿が。
義経が、帝と神器の乗った舟がどれかを知った時だった。
他の神器を抱えた女官2人も、二位尼の後に続いた。
ついには安徳天皇までが……。
「嘘だろ……あ……やめろー!」
虚しく響く、義経の制止の声。
平家の兵たちは皆へたり込み、源氏の兵たちは言葉を失ったまま見つめていた。
あれほどの隆盛を誇った平家の虚しい終焉である。
戦が終わり、義時はひとり、射殺された漕ぎ手たちが打ち上げられた浜辺を歩く。
そこへ義経が現れる。
「策が当たったな」
義時はうつむき、言葉を発しなかった。
「どうした……これは戦だ。多少の犠牲はやむを得ん」
「多少でしょうか」
「勝たねば意味がない。これまでに討ち死にした者たちの命が無駄になる。お前の兄も 戦で死んだらしいな」
「はい」
「無駄にならずに済んだぞ」
「兄は 平家に苦しめられる民のことを思っていました。果たして喜んでくれているのかどうか」
「私の戦にケチをつけるか」
「そうではございませぬが……」
死んだ漕ぎ手は丁重に葬ってやれと、義経は義時に命じる。
「義仲も死に 平家も滅んだ。この先 私は誰と戦えばよいのか」
「私は戦場でしか役に立たぬ」
義経は義時にそう言い、去って行った。
なんという強烈な自覚か。
こうして壇ノ浦の戦いは幕を閉じた。
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平家は滅んだものの 重臣 梶原景時の知略
場は鎌倉御所。
源氏の勝利を時政らは素直に喜んだが、頼朝は厳しかった。
帝を救えず、三種の神器のうちの宝剣を失っては、勝利とは言えない、九郎を叱りつけてやると。
だが、政子のもとを訪れた頼朝は、ようやく胸の内を吐き出す。
「平家が滅んだ」
「おめでとうございます!」
「九郎がやってくれた。九郎が……平家が滅んだ!」
すすり泣く頼朝。
悲願成就を成し遂げたのだ。
当然の感情だろう。
政子に抱き締められ、うれし涙の止まらない頼朝だった。
場は京の御所へと移る。
調子に乗りつつも、帝と宝剣の件を義経は謝罪した。
しかし法王は、それより九郎の獅子奮迅の働きをじかに聞きたいとリクエスト。
目を輝かせて応じる義経だった。
時政、三浦義村、和田義盛、畠山重忠は、酒を酌み交わしつつ、そんな義経の噂話をしていた。
義村は嘆く。
義経は漕ぎ手殺しですっかり評判を落としたと。
和田も、追い詰められたにしても、バカなことを考えたものだと続ける。
だが、義時はきっぱりと言い切った。
「全て計算のうちでしょう」
今度は畠山が嘆く。
「梶原殿は なぜお止めしなかったのか…」
場面は鎌倉に戻る。
その梶原は一足先に鎌倉に戻っていた。
「九郎殿は 戦にかけては 神がかった強さを持っておられます。しかしながら 才走るあまり 人の情けというものを ないがしろにされます。壇ノ浦で 船乗りを狙い撃ちしたのが よい例」
その策を「どう思う?」と訊かれながら止めなかった梶原が、何食わぬ顔で頼朝に報告する。
安達が、都では義経の噂で持ち切りだと聞いていると言えば… 。
「鎌倉殿を差し置いて 平家の後は 九郎義経の世だと口にする者も」
義経にとっても、頼朝にとっても、ネガティブな報告をする梶原。
意識的としか思えない。
頼朝は義経を呼び戻せと命じるが、義経は京を守護する検非違使に任命されていて、都をはなれるわけにはいかない。
深いため息を漏らす頼朝だった。
兄と弟 正室と側室
京の義経のもとに、頼朝から文が来ていた。
読み終えた義経は、不満顔で義時に文を返す。
「戦に勝って どうして兄上に怒られなければならない」
「九郎殿が力を持ち過ぎるのを 恐れておられるのでは?」
「私は 兄上の喜ぶ顔が見たいだけだ」
「わかっております。1日でも早く ご自分の口で 弁明なされるべきでございます」
「帰れるものなら帰りたい。検非違使になんかなるんじゃなかった」
「ここは 九郎殿自ら 法皇様に返上なさるのがよろしいかと」
深刻な話の中、川の中州から、静御前が全然釣れないと義経に声をかける。
「比企殿のお身内の方も 京へ来ていると聞きましたが」
「それはそれ あれはあれ」
「我らは 明日 こちらを発ちます」
「法皇様に掛け合ってみる。次は 鎌倉で会おう」
うなずき合い、別れる2人。
義時が川沿いを歩いていると、怪しい女人が木陰から中洲の様子を窺っていた。
「ひょっとして…比企殿の…」
比企の姪の里は、義時を一瞥したものの、すぐに義経たちに視線を戻す。
義時はそれ以上何も言わず、その場を後にした。
時を移し、今日の御所では、義経が検非違使の役職を辞したいと法皇に願い出ていた。
義経は鎌倉へ行っても京に戻ってくると言い張るが、法皇は納得しない。
そこで丹後局が助け舟を出した。
罪人の沙汰は検非違使の役目、捕らえられている平宗盛を鎌倉へ連れて行き、京で首をはねるために連れ戻ってくるというもの。
その中で兄弟の話になった時、義経は神妙な雰囲気で尋ねた。
「仲たがいしたことはあったか」
「ござらぬ。心を開き合ったことがなかったゆえ。しかし それでも 信じ合っており申した。それが兄弟というもの」
遠く鎌倉へ思いを馳せる義経だった。
引き裂かれる兄弟とまさかの腰越状
頼朝は、義経が検非違使の職を辞していないことに疑念を抱いていた。
ここぞとばかりに、梶原景時はまくし立てる。
「全て 法皇様と九郎殿が示し合わせたこと。よほど 九郎殿は気に入られているご様子。これでは 勘違いされても不思議はございません。鎌倉殿の後を継ぐのは 自分だと思われたとしても…」
たまらずに義時が割って入る。
「お待ちください。あの方に野心があるとは とても思えませぬ」
「九郎殿を鎌倉に入れてはなりませぬ。何を企んでおるかわかりませぬぞ」
「ありえません!」
「言い切れるか?」
義時が返答に迷っている一瞬に、頼朝は心を決めた。
「九郎には会わん。会うのは宗盛のみとする。九郎は腰越で留め置け」
「それがよろしいかと」
「九郎殿に会ってやってください」
「やつを 決して御所に入れてはならん」
そう命じて頼朝は去った。
残った梶原に義時が声をかける。
「梶原殿 あなたもわかっておられるはず。九郎殿は 鎌倉殿に会って 話がしたいだけなのです」
「そなたも 戦場での九郎殿の様子を見たであろう」
「見ました」
「あのお方は 天に選ばれたお方。鎌倉殿も同じだ。お2人とも 己の信じた道を行くには手を選ばぬ。そのようなお2人が 並び立つはずはない」
なんという勝手な理屈か。
その理屈が正しいとしても、梶原が兄弟の仲を裂いてどうする。
治世に優れた兄と、戦 戦略に優れた弟。
弟が勘違いな野心を抱かぬ限り、うまくいく可能性だってある。
弟が何か間違えば、兄が叱り、軌道修正をすればいい。
言うほど容易いことではないが、本人たちの意志が存在しないところで、勝手に仲を裂くよりは何倍も建設的だ。
ということで、このドラマでは梶原景時が悪役を独り占めである。
腰越に留まるようにとの沙汰を受けた義経。
「訳が分からぬ! なぜだ?」
時政の前でそう嘆いた後は、なぜか平宗盛がいる部屋で不貞腐れているシーン。
宗盛に全てを愚痴ったらしく、宗盛は頼朝への文の代筆を買って出る。
でも義経なら知っている事実を間違えて書いてあり、義経が書いたものでないことはすぐに頼朝にばれてしまう。
怒った頼朝は、「とっとと京へ帰れと伝えよ」と義時に命じる。
何とも雑な印象を受けた腰越状の件だった。
もっと言えば展開が乱暴。
腰越状を書いたのが平宗盛って……というのが率直な感想である。
さて、腰越に戻り、義時は義経を説得していた。
「きちんとお会いして お話されるべきです」
「無用だ。兄上が帰れと言うのなら それに従うまでのこと」
「私から鎌倉殿に…」
「もうよい!」
兄に拒絶されてしまった義経は頑なだった。
その場にいた宗盛には、京に帰る前にと、嫡男の清宗と引き合わせる。
「今夜は 親子で ゆっくり語り合うがいい」
戦場を離れれば、義経は情の深い男だった。
義経は義時に腰越には来たことがあると語る。
平泉を離れ、頼朝に会いに行く途中、立ち寄ったのだと。
「私は決めた。この先 法皇様第一にお仕えする。京の都で 源氏の名に恥じぬよう生きる。私は検非違使の尉。源九郎判官義経(げんくろうほうがんよしつね)だ」
義時は言葉もなく、孤独な決意を見守るしかなかった。
そこへ義経が呼んだ大勢の地元民がやってくる。
鎌倉へ向かう途中の義経一行に芋を振る舞い、道を教えた青年の姿もあった。
その礼にと、義経は大量の立派な芋を彼らに振る舞う。
皆、大喜びである。
お前も食えと義経に勧められ、美味しそうに口にする義時。
義経を囲んだ郎党と地元民たちは、昔話に花を咲かせて笑い合う。
大笑いし、芋にかじりつく義経のアップで「つづく」。
次回予告
次回は 第19回「果たせぬ凱旋」。
義経「ははっ」
政子「九郎殿と鎌倉殿は いずれ必ず ぶつかります」
行家「頼朝の首を取れ」
義経「血を分けた兄弟ではないか!」
義時「戦はもう 終わりにしましょう」
頼朝?「京へ攻め上る」
義経「いつか必ず迎えに行く」
間違っていたらごめんなさい。
義経の伊予守(いよのかみ)就任に頼朝激怒!
そりゃ怒るだろうけども…そもそも、原因は(以下略)
義経邸の夜討ちのシーンがあった。
行家叔父…生きていたのか…相変わらず…。
義時と義経が一緒のシーンがあったけど、その台詞を言うなら相手が違うのでは?
バックが紅葉だったけど??
次回予告に関しては以上。
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あとがき
梶原景時のせいで台詞の書き出しが多くなってしまった。
憎き梶原を演じた中村獅童さんの奸臣ぶりがお見事。
それにしても頼朝も頼朝だ。
義仲討伐の先発隊の大将が梶原に決まりかけた時、「最後に信じられるのは肉親」のようなことを言って、義経を指名したではないか。
それが今回は梶原の言葉だけを鵜呑みにし、義経本人の弁明を聞こうともしなかった。
ん? もしかして梶原は大将の座を奪われた時から、義経に嫉妬をしていた?
と、後から思えばそう思えなくもない恐ろしさ。
話は変わって壇ノ浦の戦い。
一の谷の合戦がああだったので心配したけど、そこそこのスケール感があった。
義経が飛び回るものだから、躍動感は期待以上のものだった。
戦が終わってからの虚しさには、予想以上に心を揺さぶられた。
様々な要素がギュッと詰められた、見応えのある回になったと思う。
今回は一気に腰越状まできて、予告を観る限り、次回は一気に都落ちまでいきそうである。
次回を楽しみにしたい。
それではまた。
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