「月にのぼる者」感想 光秀の魅力満載の回
今回の主要キャスト
三条西実澄 石橋蓮司さん
菊丸 岡村隆史さん
駒 門脇麦さん
たま 芦田愛菜さん
藤田伝吾 徳重聡さん
光秀と丹波の国衆、光秀と秀吉、光秀と信長、光秀と菊丸、光秀と正親町天皇。
やはり佳境ともなると見どころだらけである。
光秀専用ジェットコースターに一緒に乗せられた気分。
では、詳しい感想は本文で。
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それぞれの心情を考えているうちに憶測の連鎖
手こずった丹波の国衆たちとの戦に、光秀はようやく勝利する。
そこで下した国衆たちへの裁断は、政治力に長けた光秀が選択した最善の道。
首をはねなかったのは単なる温情ではない。
戦地となり、荒れ果てた町や農地の復興に当たらせるのは、地元の国衆たちがもっとも適任である。
遺恨を残したままというデメリットもあるが、自分たちで復興した国を再び戦で荒らそうと思う者は、まずいないだろう。
丹波の国衆が信長に従わないのは、恩義のある足利家に義理立てしてのこと。
義昭はまだ信長討伐を諦めてない。
義昭の立場に立てば、気持ちはわからないでもない。
義昭は比叡山焼き討ちから信長嫌いに拍車がかかったのだが、このドラマの信長に世を平らかにする技量はないからだ。
相談相手であり軍師的存在でもあった帰蝶には去られ、もっとも頼りとする光秀も信頼できなくなっている信長。
案の定、狂気の暴走に歯止めがかからなくなっている。
いや、例え帰蝶が側にいて、信長が光秀を信じていたとしても、暴走は続いていたと思った方がいいのか。
帰蝶が去ったのは、自分の言葉に信長が耳を傾けてくれなくなったからかもしれない。
比叡山焼き討ち、豪華過ぎる安土城築城に、帰蝶が異を唱えていたとしたら。
帰蝶には、本能寺で信長と運命をともにしてもらいたいが、なんとなく帰蝶がいない本能寺が目の裏にちらつく。
幻であることを願う次第だ。
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光秀VS 秀吉! 息を呑む心理戦
「私の足元に及ばぬどころか 見事に私の足をすくった」
光秀ははっきりと秀吉に言い放った。
平蜘蛛(ひらぐも)の件である。
麒麟がくる File096
— 【公式】大河ドラマ「麒麟がくる」毎週日曜放送 (@nhk_kirin) 2021年1月18日
(第41回より)#麒麟がくる #麒麟File#明智光秀 #長谷川博己 pic.twitter.com/wXeKhmEyjF
いつの間にか秀吉の身辺を調べ、誤魔化しのきかない事実を突きつける光秀。
「いつもは秀吉が先手で情報をつかみ、駆け引きを仕掛ける側ですが、こたびはどうやら様子が違います・・・。光秀はいかなる芝居を打って出るのか?!したらば秀吉はどう返すのか?!両者の心理戦、どうぞお楽しみに!」(佐々木蔵之介)#麒麟がくる
— 【公式】大河ドラマ「麒麟がくる」毎週日曜放送 (@nhk_kirin) 2021年1月17日
今夜放送!
[総合/BS4K]夜8時 [BSP]午後6時 pic.twitter.com/8lGKaSlstL
前回のコメントで佐々木蔵之介さんが言っていたように、秀吉に非はない。
光秀もそれをわかった上での心理戦と思うと面白い。
信長に光秀の不信感を抱かせるために告げ口をした、義理より出世を選んだなどと、光秀は笑顔で言いがかりをつける。
本心と演技、半々といったところか。
対する秀吉は、最初は強く否定していたものの、光秀と久秀の密談を盗み聞きしていた義弟の名を出され、観念してみせる。
必殺・平謝りを繰り出す秀吉だが、ひとつだけ真実と思われる言葉があった。
光秀に、秀吉が思う「平らかな世とは?」と問われて出た言葉。
「昔の わしのような貧乏人がおらぬ世ですかな…」
本気であることは次のシーンとセットにするとわかりやすいが、その前に。
「こたびのこと 貸しにしておく」
この光秀の言葉が生きる場面は今後あるのか。
ちょっと気になった。
菊丸を怪しむ台詞を残して去った秀吉。
なんと見応えのあるシーンであったことか。
光秀の目ヂカラはすごく、秀吉もたまに鋭い視線を送り、息を呑むような真剣勝負の心理戦だった。
結果的に秀吉が光秀に借りを作った形になったが、完全に光秀の勝ちとも言い切れない気がする。
そして秀吉は早速、口の軽い義弟を家臣たちに抹殺させる。
待つ間、秀吉は群がる貧しい子らに金を恵んでいた。
戻ってきた家臣たちに、こう呟く。
「見よ 昔のわしじゃ…皆 昔のわしじゃ」
「物乞いする子どもたちを見て“昔のわしじゃ”と言います。一方で、“今のわしはもう違う・・・”と思っています。『血の川へここまで踏み込んだからには、先に行くしかない』マクベスのセリフが思い浮かびました」(佐々木蔵之介)#麒麟がくる pic.twitter.com/jpqaP4ppXd
— 【公式】大河ドラマ「麒麟がくる」毎週日曜放送 (@nhk_kirin) 2021年1月17日
このドラマの秀吉が佐々木蔵之介さんで本当によかったと思う。
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逃げよ 菊丸!
望月東庵先生(堺正章さん)に鍼を打ってもらう口実で、光秀は菊丸に会いに行く。
やはり菊丸の正体に勘づいていた光秀は、一刻も早く京から逃げよと忠告を。
切々と語られる菊丸の心情がせつなかった。
「劇中でも本心を語っていますが、菊丸は京を離れたくなかったんだと思います。でも、それ以上に、僕は長谷川さんと離れたくなかった(笑)。登場したときから長谷川さんとのシーンが多かったので、本当にさみしい。僕個人としては、光秀推しですから(笑)」(岡村隆史)#麒麟がくる pic.twitter.com/sRTje1mDZh
— 【公式】大河ドラマ「麒麟がくる」毎週日曜放送 (@nhk_kirin) 2021年1月17日
岡村隆史さんのコメント、今生の別れみたいでやっぱりせつない。
初回から登場して、光秀とのシーンが多かったものね。
一方、市場から帰ってきて2人の話を立ち聞きしてしまった駒と、何も知らないたま。
たまは、亡くなった母の代わりに父の側にいたいと、健気な思いを吐露する。
でもちょっと待った。
「母上が亡くなり 父上ひとりを残して…嫁には行けませぬ」
う~む、やはり幼い嫡男・十五郎(石塚陸翔さん)の存在感が希薄。
こういうのが逆に気になっちゃうタイプなので、前回から尾を引いている。
今回もか~。
駒が大人らしく、たまを諭す。
父上のことは案じず、自分の将来を大事に…みたいなことを。
それじゃなてくても仲人は信長だ。
父上を案じるなら、なおさら輿入れした方がいい。
場面は変わって京の町を歩く菊丸。
人気の少ない路地に入ると、突然、後ろから迫ってくる武士が2人。
あの勢いからすると、白昼堂々と菊丸を斬るつもりだったらしい。
さすがは忍びの菊丸、すぐ殺気に気づいて太刀をかわす。
逃げようとした方向から更に2人の刺客が現れたが、見の軽い菊丸に翻弄されるばかり。
武器など使わず、手あたり次第のもので身を守り、応戦し、菊丸は無事に逃げ切った。
土煙の中を駆け抜け、幻のように姿が見えなくなるスローはとても美しかった。
これが最後じゃないといいな。
初回から光秀と濃い関りを持った菊丸には、最終話まで出てほしい。
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平蜘蛛の価値
安土城の廊下を歩く光秀と左馬之助。
BGMは信長と近衛前久が打つ鼓の音とかけ声。
凛とした鼓の音と、不穏さを印象づける演出が相まっていい感じである。
そういえば、伊呂波太夫(尾野真千子さん)が光秀に頼んでいた。
信長に、前久が京に戻れるよう申し入れてほしいと。
願いはかなったようで、前久は元の公家らしい装束に身を包んでいた。
「自身の立場やこの先のことを考えて、信長と付き合っているのは確かだと思います。でも、それだけではなく、前久が信長との関係を続けているのは、単純に信長のことが好きなんだろうなと思います。また、このシーンでようやく染谷さんとお芝居ができて楽しかったです」(本郷奏多)#麒麟がくる pic.twitter.com/UXCymT4EZm
— 【公式】大河ドラマ「麒麟がくる」毎週日曜放送 (@nhk_kirin) 2021年1月17日
やっぱり公家姿がお似合いの本郷奏多さん、凛々しくも美しい。
信長と懇意にしていれば、宿敵・二条晴良(小藪千豊さん)も手は出せまい。
「前(さき)の関白も 今や信長殿の操り人形じゃ。やむなし。やむなし」
光秀に自嘲してみせ、前久は完成前の天守見学へと強制連行された。
ここから信長との息詰まるシーンが始まる。
それにしても、光秀の背中越しの信長、ちっちゃ!
いくら何でも遠過ぎるだろう。
前回の公式Twitterを再掲。
【ちょい足し麒麟】
— 【公式】大河ドラマ「麒麟がくる」毎週日曜放送 (@nhk_kirin) 2021年1月12日
絶大な力を誇っていた信長が造った、夢の城<安土城>。
そのスケール感を表現するために美術スタッフが準備したセットは、金と黒を基調とした華美な装飾に、当時は大変高価だった畳を敷き詰めた、広さ240畳の大広間でした。#麒麟がくる pic.twitter.com/oBHewnnYNE
話をドラマに戻そう。
晴良は京での評判が悪いと言いつつ、自分の風評は上々だと言ってのける信長。
信長の評判が悪いことも知っている光秀は、ストレートに問う。
「それは どなたにお聞きになりましたか?」
信長の顔色が変わる。
「どなたに? …皆がそう申しておる!」
子どもみたいな返しをする信長。
光秀に痛いところを突かれまくり、とうとうキレる。
「もうよい!」
「もそっと素直な物言いをせよ!」
「私は素直に 正直な気持ちを申し上げておりまする」
しばしの沈黙の後、光秀は左馬之助に平蜘蛛の釜を持ってこさせ、信長の前まで行って差し出す。
嘘をついたことを詫び、伊呂波太夫から聞いた久秀のメッセージとともに。
「殿にも そういうお覚悟をお持ちいただければ幸いと存じまする」
誇り高く、志高く、心美しい主君になってほしいと願う光秀。
瞬きもせず、大きな目でジッと光秀を見つめていたが、我に返ったように一瞬目を伏せた信長は立ち上がった。
「なんとも 厄介な平蜘蛛じゃな」
面倒くさそうに平蜘蛛に近寄り、釜の蓋を開けてみたり、片方を少し持ち上げて斜めにしてみたり、ぞんざいな扱いをする。
もはや平蜘蛛には興味がなく、光秀の真意も響かなかったようだ。
金に換えると言い、戸惑う光秀を面白そうに見つめる。
今まで見たことのない、顔をゆがめた笑顔で。
光秀、信長はもう以前の信長には戻らないよ、と言いたくなった。
平蜘蛛の行き先はいかに。
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正親町天皇(帝)に拝謁 神秘的な満月の夜
月見の晩、ようやく光秀の帝への拝謁がかなった。
帝が光秀と話がしたいと言ってから何年後のことだろうか。
実澄だけを供に現れた帝と、庭に控えていた光秀。
初めて尊顔を拝した光秀の表情は、まるでこの世のものではない存在を見るかのような顔だった。
月の光にだけ映し出される姿は、神秘的な存在感をより濃く放っている。
帝が話し始めたのは、桂男(かつらおとこ)の物語。
確認するように、光秀にあらすじを語らせる。
私は知らなかったので面白く聞き入った。
SFファンタジーのような物語だった。
欲望に負けてエゴに走り、神の怒りに触れた男は、不老不死のまま月に閉じ込められたという内容。
帝は先帝から、月は遠くから眺めるのがよい、美しいものに近づき、そこから何かを得ようとしてはならぬと、教えを受けたという。
しかし、力ある者は皆、月へ駆け上がろうとするのだと。
「ちんは これまで あまたの武士たちが あの月へのぼるのを見てまいった。そして 皆 この下界へ帰ってくる者はなかった」
「信長はどうか?」
「この後 信長が道を間違えぬよう しかと見届けよ」
とうとう帝にまで信長を丸投げされた光秀。
早く譲位しろと迫るくらいだから、もう帝の言うことも聞かないんだろうけど。
「帝の心情がこぼれ出るような回でした。信長は、さまざまな意味で自分を失っているのです。だから光秀に、頼むよ、と。『力のある者はみな月に上りたがる。しかし下界に戻ってきた者はいなかった』世をふかんして見ている帝の心情は、この言葉に尽きるのではないでしょうか」(坂東玉三郎)#麒麟がくる pic.twitter.com/E8uATkOZfs
— 【公式】大河ドラマ「麒麟がくる」毎週日曜放送 (@nhk_kirin) 2021年1月17日
坂東玉三郎さんのコメント、上品で素敵。
思いを託された光秀は、ひとりで限界まで耐えるんだろうな。
そして、いよいよたまの輿入れの日がやってきた。
「母上に代わって父上を支えなくてはいけない、という思いがとても強かったと思います。多くのものを背負い過ぎていたけど、駒さんと話しているうちにそれが少しずつ軽くなっていった。嫁に行く決心ができたのは、駒さんの存在が大きかったと思います」(芦田愛菜)#麒麟がくる pic.twitter.com/owPYxoPZ9O
— 【公式】大河ドラマ「麒麟がくる」毎週日曜放送 (@nhk_kirin) 2021年1月17日
芦田愛菜さん、奇麗ね。
やっぱり駒の言葉が背中を押したんだ。
今回はこのシーンで「つづく」。
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次回予告とあとがき
次回は第42回「離れゆく心」。
信長「女 子ども ひとり残らず殺せ!」
光秀「それでは人はついてまいりませぬ!」
信長「ついてこなければ 成敗するまでじゃ!」
光秀「来るな!」
信長「帰れ」
秀吉「来るな?」
信長「帰れ」
家康「今の信長様は味方を遠ざけてしまわれておる。己を貫くほかありませぬ」
光秀「全ての争いが公方様に繋がっておる」
藤孝「公方様?」
信長「何の話をした?」
義昭「信長がいる京へは戻らぬ」
光秀「うっ!」
信長「申せ!」
光秀「殿!」
信長は相変わらずだし、秀吉はカチンときてるし、最後なんて信長が光秀を殴っているしで、なかなか激しい予告だった。
「離れゆく心」は信長の心かな。
一瞬だけ菊丸が映ったので安心した。
そして何より、左馬之助に恋の予感!
長かった……長かったな、左馬之助!
次回予告に関しては以上。
今回の総括!
- すべてが見どころだった
手抜きじゃないのよ。
だって光秀がずっと誰かと絡んでるんだもん。
次回はもうどうなっちゃうの~?
あ、よく考えたら『麒麟がくる』ってタイトル自体がファンタジーだ。
残りわずか。
皆さん、一緒に楽しみましょ~!
それではまた。
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