「不安障害」「パニック障害」の正しい知識と理解を
現在の日本や世界の状況に、不安を覚えない人はいないのではないだろうか。
日常生活に多少なり変化が生じる人はもちろん、変わらなくても情報を目にし、耳にして感じる不安は、人間として当然で正常な反応である。
「不安」に「障害」が付いてもピンとこない人も多いはず。
かく言う私もそうだった。
本ブログを初めてご覧になる方もおられると思うので、この記事を書くに至った経緯を短く記しておく。
私は昨年9月にうつ病と診断され、障害者手帳の申請を行ったところ、障害等級は1級だった。1級とは、これより上はない重度であることを示す。
もうだいぶ前から働ける状態ではなく、昨年の夏からは家事もできなくなり、現在では自分の日常生活だけで精一杯。
しかし、時々認知症の父の介護を1人でしなくてはならない日もある。
そんな日々の中、障害者年金の申請手続きを進めるうち、以前通っていた心療内科医に依頼した「受診状況等証明書」が目に入った。
病名の欄に「睡眠障害」と並んでいたのが、初めて目にする「不安障害」という文字。
不眠のため通院していたので、もちろん睡眠障害の自覚はあった。
しかし不安障害は医師に告げられたこともなければ、他で耳にしたこともない。
そこで不安障害について調べ、こうして記事にするに至ったわけである。
調べてよかったと思う。
想像していたものと違っていたからだ。
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不安障害とは?
不安やストレスは様々な行動に表れ、心理的にも影響を及ぼす。
イライラしたり、眠れなくなったり、めまいや動悸、息苦しさを感じたり。
一時的なものや、短期間でおさまるものであれば問題はない。
これが限度を超え、長期に渡ったり、頻繁に表れたりすることを「不安発作」または「パニック発作」という。
パニック障害、社交不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)などといった言葉を聞いたことはないだろうか。
それら不安が主原因である精神疾患の総称が「不安障害」である。
以前に取り上げた例でいうと、睡眠障害に分類される不眠・過眠等、摂食障害に分類される拒食症・過食症。
同じような位置づけで、パニック障害・社交不安障害・PTSDなどは、不安障害の1つとして分類されている。
私の拙い説明ではわかりにくいという方は、こちらでご確認いただきたい。
尚、社交不安障害の名称については、ページ毎に「社会性不安障害」「社会不安障害」「社会恐怖」等の記述があり、厚生労働省全体では統一していない模様である。
調べてみると、2008年に日本精神神経学会で「社交不安障害:SAD」で統一すると定められたので、それ以前の資料が多く残っているのだろう。
それでは、不安障害に該当する主なものを挙げてみよう。
- パニック障害
- 社交不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)
- 強迫性障害(OCD:Obsessive-Compulsive Disorder)
- 全般性不安障害
- PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)
これを見ると、確かに私の症状はほぼすべてに当てはまっている。
複数の障害を併せ持つことを併存というのだが、私の場合、パニック発作が起きたのは記憶にある限り一度だけで、パニック障害の症状に当てはまるものが比較的少ない。
だから知識も少ない「パニック障害」を理解し、知ってもらうため、取り上げてみようと思った次第である。
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パニック障害は理解されにくい不安障害の代表的疾患
上でも簡単に触れたが、突然、理由もなくパニック発作に襲われ、その発作が繰り返し起こる疾患を「パニック障害」という。
過去に患っていたと告白した人気芸能人もいれば、芸能活動を休止して療養している人もいるので、一般的な認知度は比較的高いのではなかろうか。
不安がもっとも典型的な形で表れるため、不安障害の体表的な障害とされるが、「たかが不安ごときで…」と思う人がいるならば、無知であることを自覚すべきである。
気持ちの問題ではないということは、すべての精神疾患に言えることであり、普段使う「不安」という言葉も、精神医学で使用する時には意味合いが異なる。
私の読者様方の中にも、何かしらの精神疾患とうつ病の併存が見られる方が多い。
原因は心理的要因(心因)、社会的要因の他に、様々な脳内神経伝達物質系が関係する脳機能異常(身体的要因)があるとする説が有力だという。
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パニック障害の主な症状
パニック障害には、パニック発作 、予期不安 、広場恐怖 の3大症状があると言われている。
それぞれ説明していこう。
パニック発作
災害や事故などで突発的に命の危険にさらされたら、誰しもが陥っても不思議ではないパニック状態。
これは元々人体に備わっていて、危険から逃れるための機能である。
ところがパニック発作は、危険などない場面でいきなり表れるのだ。
パニック障害の中でもっとも特徴的な、急性・突発性の不安の発作である。
突然、強い不安に襲われ、息苦しさ、動悸、めまい、心拍数の上昇や発汗、時にはこのまま死ぬのではという恐怖を感じることもあるのが、主たる症状。
パニック発作が起き、救急車を呼んだことがある人も多いという。
ご存知でなかった方々には、それほどまで本人にとって苦痛で恐怖な発作なのだということを、この機会に是非理解していただきたい。
病院に着く前におさまった、或いは検査をしても異常はなかったからといっても、パニック発作の苦痛と恐怖は本物なのである。
パニック発作は同じ分類の不安障害の他、うつ病などの多くの精神疾患で起こることもある。
もし思い当たる人がいたら精神科・心療内科の受診をお勧めする。
予期不安
予期不安とは、パニック発作の経験から発する二次的な症状である。
「また発作が起きるのでは」と心配し続け、発作がなくても不安な状態が1ヵ月以上続く状態をという。
パニック障害だという自覚がない場合、何か重大な病気ではないか、気が変になってしまわないかと心配し続けたり、発作が起こる不安から急に仕事をやめてしまったりするケースもある。
パニック発作が発端の予期不安は、人生に多大な影響を及ぼすこともあるのだ。
広場恐怖
こちらもパニック発作から生じる二次的な症状で、パニック障害患者のほとんどがこの症状を伴う。
行動の自由が束縛され、発作が起きてもすぐ逃げられないのではと恐怖を感じ、生活に支障を来してしまうのが「広場恐怖」である。
ちなみに特定の場所や状況で起こる恐怖症は該当しない。
電車に乗れなくなったり、買い物に行けなくなったりして行動範囲は狭まり、また1人で家にいられない、或いは1人での外出が困難になるので、家族への依存も高まる。
ただし、予期不安も広場恐怖も、すべてのパニック障害患者に必ず表れるわけではなく、他の不安障害の症状が併存することもある。
頻度や期間は人によって異なり、程度にも個人差があるため、治療法もそれぞれだ。
薬物療法や精神療法が主な治療となるが、医師の正しい診断と、患者の「良くなりたい」という気持ちの維持が求められる。
前述の厚生労働省のページで、患者へのアドバイスという記載があったので、まとめの部分のみ以下に引用する。
不安やストレスから逃げない、乗り越えることをめざす
不安や不安をもたらすストレスは、生活する以上避けることは出来ません。不安やストレスのない生活を求めるのでなく、受けとめ乗り越えるという意識をもつことが大切です。認知行動療法が教える曝露療法や、認知の歪みの修整法が役立ちます。日常生活の中で、曝露療法的な行動練習(苦手場面を避けずに、少しずつ勇気を出して挑戦し、克服していく)を心がけ、マイナス思考に陥りやすい自分の傾向に気づき、プラス思考に変えていくようにしましょう。このような前向きな生活態度によって、「自分もやれば出来る」という感覚(自己効力といいます)が生まれればしめたものです。病気に負けていない生活となり、QOLが向上するはずです。
うつ患者としては刺さる言葉もあるが、励まされる人もいるかもしれないので引用させていただいた。
ちなみに「 QOL 」とは、「生活の質」というものらしい。
本文はもっと長いので、全文をご覧になりたい方は引用元リンクをクリックしてご覧いただきたい。
出典: 不安障害|こころの病気について知る|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
出典: パニック障害・不安障害|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省
出典: パニック障害・不安障害|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省
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身近な患者への接し方
今回は「不安障害」の中から「パニック障害」を取り上げた。
パニック障害の症状は大きく次の3つ。
- パニック発作
- 予期不安
- 広場恐怖
先ほども述べたが、パニック発作が起きるのは決して気持ちの問題ではない。
患者に接するのなら、この病をよく理解し、もし自分が患者だったらと想像してみるとわかりやすいかもしれない。
普段から腫物のように扱われたくないと思うと同時に、発作が起きた場合を想像すると、ほとんどの人はこう思うのではないだろうか。
- 発作で死なないと言われても、死への恐怖は本物であり、側にいる人に安心させてもらいたい
- 慣れてきても「またか」というような顔をしないでほしい
もし家族だったら、友人知人だったら、背中を優しくさすってあげたり、「大丈夫だよ」と不安を和らげる言葉をかけてあげてたりしてほしい。
ただ、一部には「発作の時はひとりになりたい」と思う人もいるようなので、身近な人はその人の特性を理解してあげるのが1番かと思う。
そして2つ目は、パニック障害以外のすべての患者に当てはまる心理である。
「またか」というような無神経な反応は、すべての当事者を傷つけてしまうのだ。
私も亡き母も数え切れないほど経験した。
その度に悲しい思いをし、深まる傷はトラウマとなって昨日のことのように鮮明に記憶に焼きつけられる。
私も看護・介護者側の立場が長かったので、「またか…」と思ってしまう人の気持ちはよくわかる。
でも患者本人の前では顔に出さないようにしなくてはならない。
介護家族への心のケアも行われているようだが、まだ一般的ではないのか、私自身にはどこでどのように行われているのか、情報は何一つ入ってこない。
機会があれば調べてみようと思う。
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あとがき
私が不安障害の患者さんたちに伝えたいのは、不安障害は不治の病ではないということである。
昨今では「障害」と付く病名が患者にマイナスなイメージを与えるとして、「不安症」という呼び方に変わってきているそうだ。
正しい治療を受け、少しずつ自信を取り戻していくことで、必ず回復する。
私もうつ病と複数の不安障害を抱く身で、この記事を執筆するに当たり、一番述べたかったのはそのことである。
家族や友人など、身近な人に理解されないのは何より辛いことだが、自分がそこを見失ってしまっては治るものも治らないのだ。
拙い記事ではあるが、どなたかに、何らかのお役に立てたなら幸いである。
それではまた。
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