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山姥の戯言日記

うつ病 解離性障害 セルフネグレクト 骨粗鬆症の闘病・雑記ブログ「私の場合」

私を甦らせてくれた きしべの あざみ さんの本

 

リアルとファンタジーの絶妙な融合 すべてはあたたかさに帰結する

 

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10月の最後の日、とても素敵な本との出会いがあった。

いや、「とても素敵」では済まない。

私を激変させ、不可能になっていた能力を甦らせてくれた本である。

 

ブログでは初めて告白するが、実は私は母の介護以来、本を読むという行為ができなくなっていた。

 

立ち直るきっかけを与えてくださったのは、きしのべあざみさんという作家さん。

以前よりブログでの交流があり、amazonKindle本を出版されている方である。

 

今回は私の事情を少し説明した上で、きしべのあざみさんの本をご紹介したい。

予想以上に長くなってしまったので、あざみさんのプロフィール以下を読んでくださるだけで構いません。

 

 

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私が再び読書ができるようになるまで

 

前回の記事を引きずるような話だが、読書ができなくなったのは本格的な母の介護(看護を含む)が始まってからだ。

まだ私がうちの店のネットショッピングサイトを運営していた頃。

 

どの病気にも言えることかもしれないが、うつ病にも波があり、母はいつ、どんな行動をするかわからない状態。

5分もパソコンの前に座っていられず、母の部屋に何度も様子を見に行く。

 

何かに集中しているつもりでも、実際は集中できていないのだ。

ちょっとした音にも過敏になり、仕事や家事の途中でも、真っ先にすっ飛んで母の様子を見に行ってしまう。

 

パソコンの作業にも集中できないのだから、読書などできるはずもない。

 

私は小さい頃から本を読むのが大好きだった。

漫画も好きだったけど、童話や小説を読む方が好きで、暇さえあれば読書の毎日。

学校の図書館だけでは飽き足らず、市の図書館にも通っていた。

 

大人になってからは、自由に使えるお金のほとんどを本に費やすようになる。

ジャンルは問わず、SFや純文学、心理学、ファンタジー、ハードボイルド、時代物、スポーツ系、果てはBLまで。

少なくとも週に1回は車で本屋巡りをし、自室の大きな本棚2つは瞬く間に満杯になった。

 

細長いボックス棚を買い足し、買い足し、とうとう別の部屋にまで置くようになる。

母はまだ元気だったし、本を読んでいる間は自分のことも考えなくていいのだ。

あの頃が1番幸せだったかもしれない。 

 

やがて母の様子が変わり始め、私は外出もできなくなり、闇落ちしても家事だけはこなしつつ、自室にこもるようになった。

 

そこへブラザーから、私の本と本棚を処分したいとの申し出が。

ブラザーは私の影響で少しずつ読書をするようになっていたけど、本は「一度読んだら終わり」ではないということに理解が及んではいなかった。

 

少しでもお金に替えたいのかもしれない…そう思い、私は本当に大切な本だけを押し入れに避難させ、後は彼の望み通りにしてもらった。

読み直そうと思っていた本を、すべて避難させられたかどうかは定かでない。

 

とにかく私は弱っていて、記憶がもっとも曖昧な頃の話だ。

未読の本もあったけど、それが手もとに残っているかを確認する気力さえなくなっていた。

 

母が亡くなり、読書もそのうち再開しようと軽く考えていた私。

試しに数冊、押し入れから出してみた。

 

北方謙三氏の著書

 

大好きな北方謙三氏の著書。

おそらく20年以上前に購入したものだと思う。

 

まずとっかかりやすい現代もので、ページ数の少ない『そして彼が死んだ』から開いてみた。

読めたのは2ページだけ。

 

愕然とするほどの集中力のなさだった。

 

ネット生活に復帰し、皆様のブログを読むことはできるのに、本となると電子書籍すら読めない有り様。

ライター業をしていた時の調べ物の方がハードルが高いのに、大好きな読みたい本は読めない。

理由がわからず、絶望しかなかった。

 

そんな日々の中、読みたい気持ちが欠けた集中力に打ち勝つ日がきたのである。

 

きしべのあざみさんとの出会い

 

私のブログにコメントを頂戴したのが初めてだったと思う。

あざみさんは過去に私と同じような体験をし、他人事とは思えないと、何度も暖かいコメントをくださった。

的を射る短い言葉の数々に、どんなに救われたことか。

 

あざみさんのブログはこちらである。

 

azamibrog.hateblo.jp

 

当初は作家さんだとは知らなかった私。

amazonKindle本を何冊も出版なさっている。

 

そう知った途端、私も前向きになれるような気がして、「読みます!」とコメントをした気がする。

本当に読むつもりでKindleアプリをダウンロードし、あざみさんの本を開いた。

 

でも1度目は目次のページから進むことができず、失敗。

Kindleアプリは最初の30日間は無料なのだが、読めないまま有料期間に突入してしまった。

3ヵ月ほどは粘ったものの、季節は夏になり、私は一旦、Kindleアプリを解約することになった。

 

あざみさんには「読みます」詐欺になってしまい、本当に申し訳なかったと思う。

宣言すれば現実になる、本が読めるようになると信じたのだけれど。

 

そして夏を乗り切り、少し自信を回復した私は2回目の「読みます」宣言を。

しかも「10月中に」と期限までつけて。

言霊になるよう、しっかりと念を込めた。

 

月の途中だと、まだ先があると思って気合いが抜けそうな気がしたので、10月最後の日に照準を合わせた。

一球入魂、もしくは一発逆転狙いである。

 

これが見事に功を奏した。

 

最初に読むならこれがいいと、あざみさんご自身から推薦されていた本を一気に最後まで読んだのである。

嬉しさのあまり、あざみさんのブログにとんでもない長文コメントを書いてしまった。

そこで初めて、約20年、読書ができなくなっていたことも告白。

 

本当に嬉しかった。

 

前置きがとても長くなったが、次にきしべのあざみさんのプロフィールと著書をご紹介しよう。

 

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きしのべあざみさんのプロフィール

 

まずは作家としての顔、amazonで公開されているプロフィールを以下に引用する。

 

きしべの あざみです。
ファンタジー小説を中心に創作活動をしています。ファンタジーは慣れると、リラックスできますので、疲れた頭を休めたいときに是非お試し下さい。

恐竜文化賞優秀賞や日産絵本と童話のグランプリで入賞、はやしたかし童話賞などをいただきました。
その他にソフトなホラーやオカルトなども、ゆっくり書いています。

自然をまるごと食べる シリーズは3作目になりました。あざみ唯一のエッセイになります。

 

私もプロフィールを読む前は存じ上げなかったのだが、筋金入りの実力者である。

 

そして現在は複数のご病気を抱えられ、後遺症と闘いながら過ごしてらっしゃる。

お家は自営業という共通点もあり、私はますます親近感を覚えた。

 

それでは、私が読んだ順にご紹介。

  

 『ドールハウス

 

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こちらが10月31日、私が約20年ぶりに読んだ本『ドールハウス

 

あらすじ

 

主人公は19歳の美樹。

双子の弟・祐樹の異変から物語は始まる。

 

双子の祖父は世界的にも有名な人形作家。

町はずれの丘の洋館で家族は暮らし、館は町のシンボルとなっていた。

 

ところが双子の妹と、父の妹である叔母が事故で亡くなってからは、洋館から明るさと華やかさが消え、誰も寄りつかなくなってしまった。

 

双子はいつもベッタリで育ってきたため、人間関係に難があり、就職してもどちらもうまくいかない。

そこへきて、大事な家族を2人同時に失ったのだ。


生活のリズムも変わり、精神のバランスを崩したた祐樹は、病院で統合失調症との診断を受ける。

だが、実際は……。

 

感想

 

始まりは祐樹の異変、双子の、特に祐樹の美樹に対するベッタリ具合の描写が非常にセンシティブ。

その危うさに引き込まれて読み進めると、意外な事実が次々と美樹の前に現れる。

 

人形も含めた登場人物(?)たちが織りなす幻想的な世界へと、一気に引きずり込まれる感覚がした。

私は久々にシンクロするのを止められなかった。

美樹にだ。

 

幻想世界というより、精神世界といった方がいいかもしれない。

すべてに理由があってとてもリアルに感じられた。

 

本人たちが知らなかった双子の秘密も明らかになる。

祐樹に好転のチャンスを与えたのは祖父。

そして、最後に祐樹を本来の祐樹に戻すのは美樹。

 

私もあの館にいてずっと眺めている気分だった。

 

人によって感想は異なるだろうが、この本を真っ先に勧めてくださったあざみさんには感謝しかない。

本当にありがとうございました。

 

全45ページと長くはないので、興味を持たれた人には是非お読みいただきたい

 

ドールハウス (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社)

ドールハウス (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社)

  • 作者:きしべの あざみ
  • 発売日: 2020/05/25
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
 

 

 

『あやし美し春爛漫』 

  

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こちらは2番目に勧めていただいた本である。 

時代物ファンタジーは初めてでとても新鮮だった。

 

あらすじ

 

神も人も妖怪も当たり前にともに住まう、江戸の町の平行世界。

神は人の姿で暮らしに溶け込んでいた。

 

朱雀(すざく)もそのひとり。

鳳凰の化身で、4千年、人として磨いてきたと豪語する通り、江戸1番の美男と言われている。

 

そんな朱雀の想い人である吉原の明日香太夫が、恋わずらいで寝込んでいるという。

ある美しい若侍に一目惚れし、それ以来、食べることもできなくなっていたのだ。

 

江戸では若い娘が恋熱に浮かされて亡くなるという奇妙な出来事が続いていた。

妖(あやかし)の仕業であることを確信した朱雀が動き出す。

朱雀と同じ神である白虎、青龍、玄武も揃い、明日香が「若様」と愛し気に呼ぶものの正体を突き止める。

 

かくして、神々と妖の闘いは始まったのであった。

 

感想

 

呪術のせいとはいえ、神の朱雀が明日香に片思いという序盤の設定から面白い。

白虎は普段は5歳の子どものなりをしていて毎日遊び回っている。

朱雀いわく「まだ5百歳」だそうだが、化身すると大きな虎になる。

 

こちらも美男の青龍は、その名の通り龍の化身。

天上に妻子があるというだけに真面目な性格。

 

老人姿の玄武は大亀の化身で、1番頼りになる存在といった感じ。

 

そして物語の主軸となる人間の明日香は、江戸っ子らしくチャキチャキしているけど、時々覗かせる乙女心が可愛らしい。

 

明日香中心に読んでいたが、明日香の呪縛が解けるまでの前半戦と、まだ身を隠している天海(朱雀たちの敵)との後半戦に分かれていて、1冊で連続ものを読んだ気分になった。

 

ステージも江戸の町から高天原、天界へと、どんどんスケールが壮大になっていく。

全110ページだったが、こちらもあっという間に読むことができた。

それほど面白かったし、読みごたえもあった。

 

中には神や妖の悲哀、人のはかなさを描く繊細な描写もあり、決して飽きることはない。

恐ろしい妖だけでなく、可愛らしくて憎めない妖がいるのも魅力の1つ。

読後感の高揚したあたたかさはいつまでも余韻として残り、物語の中の江戸の住人になりたいと思ったほど。

 

明日香や朱雀の美しさはもちろん、神々が化身した姿は映像でも観てみたい。

本当に素晴らしいファンタジーエンターテイメントだった。

 

あやし美し春爛漫 (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社)

あやし美し春爛漫 (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社)

  • 作者:きしべのあざみ
  • 発売日: 2020/04/20
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
 

  

『夏のやくそく』

  

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3冊目は現代もの。

これがまたハマった。

 

あらすじ

 

主人公は小学6年生の花田あやめ。

2つ下の妹・あかりは生意気盛りで姉妹はいつもケンカばかり。

以前は祖母が住む館で暮らしていたが、母に連れられて今の町に引っ越していた。

 

あやめは頭の真ん中に穴が開いているみたいに、大事なことを忘れることが多く、ドーナッツ頭などと口の悪い級友に揶揄されるほどだった。

 

1日中働きづめの母に内緒で、夏休みに入った姉妹は祖母の家に向かう。

父親に会い、母ともう一度結婚してほしいと頼むために。

幼かった2人は母から父と離婚をしたと聞いていたが、母がまだ父を愛していることを子どもながらに感じ取っていたのである。

 

祖母の家に着いたものの、あいにく祖母は留守だった。

家に入り、家族写真を見つけた2人。

祖母と父と幼い自分たち、そして母は自分たちより小さい男の子を抱っこしていた。

 

祖母に受け入れられて喜ぶ2人だったが、あやめは父が7年前に突然いなくなってしまったことを知らされる。

写真の男の子が弟のゆうやで、ゆうやも同じ日にいなくなったことも。

 

話が進むにつれ、自分が夢だと思っていた不気味な祭りの光景が、現実にあったことだと知るあやめ。

音がまったくせず、背を向けたままの大勢の人たち。

そこには父とゆうやもいた。

あやめは祖母の機転で無事に帰って来ることができた。

 

いつも一緒に遊んでいた男の子2人と再会するが、彼らも何か大事なことを忘れていると言う。

幼なじみ3人組は、記憶を取り戻す決意をするが……。

 

感想

 

ホラー要素があると初めに書いてあったけど、私にとってはホラーではなかった。

小さいお子さんなら確かに怖がるとは思うが。

 

忘れてしまった大事な記憶を取り戻そうとする3人組が、とにかく健気。

 

最初に思い出したのは、3人で泣きながら指切りげんまんをしたことだ。

その時点で思い出さない方がいい記憶なのだろうと思ったが、3人組は果敢に記憶への壁を乗り越えようとする。

 

その後の展開も見事だが、私の胸に焼きついたのは私の中にもある原風景。

お盆には迎え火を焚いて先祖を迎え、送り出す時には送り火を焚く。

火を焚くついでに必ず花火もしていたものだ。

でも今の家に引っ越してからは一度もしていない。

している家を見たこともない。

 

法律ができたからか、町内会の決め事でもあったのか…。

 

それよりも、あやめの強さと行動力には驚かされる。

祖母は父も弟もどこかで亡くなったものと思っているが、あやめは生きていると信じた。

 

子どもたちの純粋な強さ、そして生と死の間の世界を描いた神秘的なファンタジーだった。

全87ページで、こちらも読後にあたたかさを噛みしめるような作品になっている。

きっと、きしべのあざみさんの精神世界は厳しくもあたたかいんだろうなぁ。

 

夏のやくそく (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社)

夏のやくそく (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社)

  • 作者:きしべのあざみ
  • 発売日: 2020/06/23
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
 

 

そして、これこそご自身の精神世界だと仰ったのは『摩天楼のネジ穴』

 

まだ最初の方しか読めていないけど、画像だけ載せよう。

 

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本当にまだ初めの方だから、これから何が起きるの~? とワクワク。

 

私にまた読書の楽しさを取り戻させてくださった きしべのあざみ さん。

大恩人です。

 

現在出版している本を全部読んでから、北方謙三氏の著書に再挑戦します。

 

摩天楼のネジ穴: 最新版

摩天楼のネジ穴: 最新版

 

 

『田舎で食べたジビエと都会のジビエ 自然をまるごと食べよう』

 

 

こちらは唯一のエッセイと仰っていたシリーズの1作目。

興味があったので、この記事を書き始める前に拝読した。

 

ジビエはフランス料理だったのか! と、まずそこに驚く。

そして普段はお目にかからない様々な肉の特徴やレシピまで。

 

いや、こちらはど田舎なので、山の方に住んでいる人から話は聞いたことがある。

「この前、熊鍋をご馳走になったのよ」

とか。

 

あと、元親せきが狩猟が趣味で、キジかヤマドリをぶらさげて現れたりね。

食べた記憶はないんだけど。

 

父が小さい頃はカレーの肉はウサギだったとか。

それが精いっぱいの贅沢だった時代の話だ。

 

そして私は小さい頃から胃腸が弱かったので「熊の胆(い)」なるものを飲まされたりもした。

胃だと思ってたけど胆のうだったのね…。

確かにギリギリした痛みには即、効いたことを憶えている。

熊さん、本当にありがとう。

 

でも肉そのものは食べたことがない。

 

ど田舎だけど町なかまで回ってこないだけだろうか。

イノシシの肉さえ見たことがないなんて。

 

猟師の高齢化による減少は確かに感じる。

 

それにしても、あざみさんの自然への向き合い方は半端なものではない。

畏敬の念と感謝の念を同時に感じる。

 

だから、今回ご紹介したような作品を書くことができるのだろうと思った。

肉や魚、野菜を食する時に感謝の気持ちすら湧かなかった自分が恥ずかしい。

 

哲学的な視点からも、いろいろと考えさせられた1冊となった。

 

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あとがき

 

初めに自分のことも書いたため、思いの外、長い記事となった。

願わくは、小説の映像化である。

どこかの偉い人、きしべのあざみさんを見つけてくれないかな。

 

私にできることは本を紹介したり、感想を書いたりすることだけ。

超弱小ブログなので、どこまでお力になれるかは自信がない。

 

秋の夜長、是非きしのべあざみさんの作品を読んでみていただきたい。

『摩天楼のネジ穴』は読み終えたら改めて感想記事を書きます。

それではまた。

 

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